「飲食店のスタッフの教育って難しい!長く働いてくれたらいいけど」
「どうしたらもっと上手く教える事ができるのだろう・・・」
・こういった悩み事を持つ飲食店の店長
・料理の修行をして独立したが、スタッフの教育は経験が無いという個人店のオーナー兼店長
これから私が紹介する教育方法を導入した店舗は、新人スタッフの3か月以内の離職率が、導入前後の対比で最低17.8%~最高68.2%と目に見える形で改善に繋がった手法です。
私は約20年間の間、飲食店の店長やマネージャー、教育担当のトレーナーを経験しました。
社員やアルバイトスタッフの育成はもちろん、育成マニュアルの構築に携わった経験で得た知見を初公開します。
「飲食店のスタッフが長く働く教育の仕方」について専門的に解説しながら、具体的な事例や方法論を紹介したいと思います。
私もスタッフの教育では、これまでたくさんの失敗をしてきました。
色々な人に相談したり、学んだことを改善に活かして作り上げた、私独自の方法論ですので悩んでいる方の参考になれば幸いです。
それでは解説していきます。
Contents
飲食店のスタッフが長く働くコツを元飲食店店長が徹底解説!
飲食店のスタッフは離職率が高く、長く続く人の方が珍しいと言われます。
そんな中でも、次のようなお店も確実に存在します。
- スタッフが長く働く教育をしているお店
- アルバイトが楽しいということで、既存スタッフが友達を紹介してくれるお店
- スタッフの定着率が高く、募集費がかからないお店
一方で「いつもスタッフが足りない」、「募集費は常に掛けているけど中々スタッフが続かない」というお店に一番必要な事は「スタッフの教育方法の見直し」です。
この部分の解説と具体的な改善策を紹介します。
スタッフの教育方法の見直し
スタッフの教育方法には、大きく分けると2種類あります。
OJT(On the Job Training)とOFF JT(Off the Job Training)です。
前者は、実際の仕事の流れの中で実践して、教えながら教育する方法
後者は、実務とは別枠で教育する時間を取り、知識ややり方を教育する方法です。
スタッフが足りないお店でよくありがちな教え方は、勤務初日にいきなりOJTで教育を始めることです。
「そんなの当たり前のことじゃない?」と思われた方も多いと思います。
実際に多くの飲食店ではOJTで教育を始めるのがほとんどです。
OJTでの教育は、当日にできることをやってもらうだけなので、前準備をしなくても仕事を教えることができます。
教える側の視点で見れば簡単な方法ですが、このOJTから始める教育の仕方が、スタッフの離職率を高める大きな原因です。
既存のスタッフであれば、慣れているので作業自体は早くできるはずです。
初めて教えるスタッフを教育する上で、一番大切なことは作業を早くできるようにすることではありません。
そのスタッフの思っていることや感じていることに寄り添って教えることです。
このスタッフが仕事に取り組む初期の段階で、不安な気持ちや疑問を解消してあげることがとても重要なことなのです。
OFFJTでの教育であれば、初めてすることをいきなりお客様にするのではないため、心のゆとりを持てます。
予習をしてから本番を迎えることができる訳です。
またやってみてわからない、上手くいかないことが事前にわかるので聞くこともできます。
実際には、スタッフから「これ難しいんですがどうしたら上手くできますか?」と聞かれることは少ないと思います。
OFF JTであれば、事前にやってみる流れで、難しそうにしていることに気づいてあげることができます。
スタッフの能力や理解度を把握した上で仕事を教えることができるようになります。
初期の参加意識と自己肯定感の創出も重要!
OJTの場合は、お客様がいる場面で、具体的な動きを現実に即した形で教えることができます。
しかし、お客様が続けてご来店された時は、教える人間が直接対応をせまられます。
スタッフに教えることができずに、見ていてもらうだけということも起こりえます。
OFF JTで初期教育をしておけば、OJTを始める際にも一度教えて実践していることをするので、初めて見るとまどいが少なく、OJTでいきなり教えるよりも理解度が高い実践的なトレーニングができます。
最も重要な事は、急な来店などで新人スタッフに教えることが難しい状況でも、見ていてもらったり事前に教えたことをしてもらうことで仕事への参加している意識を強く持ってもらえます。
この仕事への参加意識を早期にスタッフに持ってもらうことと、参加できたことによる自己肯定感が早期離脱を防ぐポイントになります。
いきなりのOJTで見ていてもらうだけというのは放置しているに過ぎません。
しかし、一度OFF JTで説明していれば見ることも自分の仕事としてとらえることに繋がり、実践編として教わる側の理解度が高まるのです。
元飲食店店長の経験からスタッフが辞めにくいお店にする方法を紹介!
もしあなたが、新しく採用したスタッフに少しでも長く働いて欲しいと考えるならOFF JTから始める教育方法に切り替えましょう!
そして新しいスタッフの初期の参加意識と自己肯定感の創出に力を注いで下さい。
冒頭で私の経験上17.8%~68.2%の範囲で、3か月以内の早期離職率の改善に繋げたお話をしました。
お店の業態や現状の環境によってこの数字は変わりますが、実際に取り組むことでスタッフの早期の離職率が低くなることを確実に実感してもらえると思います。
私が実践してきたOFFJT教育の始め方
OFF JTと言っても1時間から3時間の事前研修です。
営業中はお客様のご来店状況などで、どうしても予定通りに進めることができないことが多いです。
私は事前に教える時間を確保して予定している内容を教えた状態でOJTをスタートするようにしていました。
営業の始まるまでの時間に時間調整するのがおすすめです。
営業時間の前であれば、お客様の来店に左右されずにほぼ確実に予定している内容を教えることができます。
面接の段階で、
「いきなりお店が忙しい時間帯に働くと仕事の流れもわからないと思うので、事前に時間を設けて仕事に慣れるための時間を1,2時間用意して欲しい」
と伝えれば、ほとんどの場合は事前に参加してくれます。
営業前からシフトに入るのが難しいというスタッフもいると思います。
その場合は、当日の教える時間帯を任せれるメンバーで固めて、トレーニングに集中できるようにすればOKです。
「今、人がいなくて困っている」というお店であれば、営業中に初めてのスタッフに教えながらお客様への対応をするのはかなり難しいはずです。
忙しくバタバタする中で、お客様へも感じよく接し、スタッフへも感じよく接するというのはあなたが思う以上に難しいことです。
お客様を失うか、新しく働くスタッフを失うというリスクが高まります。
ここに、事前にOFF JTを設けることのメリットがあるわけです。
初日のOFF JTで教えることはこの3つ!
初日のOFF JTは次の3つを教えるだけです。
①テーブル番号・トイレ・レジの場所と店内の備品類などの配置を教える
まずは店内配置を教えます。
テーブル番号は商品提供やオーダーを取るのに必要なので必ず覚えてもらいます。
トイレやレジはお客様から尋ねられることもあるので、場所の説明とご案内ができるようにしますしょう。
備品の場所を教えると、お客様がお箸やスプーンを落とされたときや、追加の取り皿のご要望などに対応ができるようになります。
②トレンチの使い方と商品提供の仕方を教える
トレンチ(配膳盆)があるお店であれば、最初に使い方を教えてトレンチを使うことを習慣化します。
商品提供やバッシングなどでもトレンチを使うと、より早く効率的な作業ができるので教えるが望ましいです。
トレンチがあっても使わない店が多いですが、これは私の経験上そのお店では、トレンチの使い方を上手く使える人OR使い方を上手く説明できる人がいない。
↓
トレンチの誤った使い方をしてミスが多発。
↓
ミスの対応にも時間が取られてしまうため、使わない選択をする。
↓
トレンチを使わないから、運ぶ手間が増え非効率で時間がかかる。
という負のスパイラルに陥ります。
YOUTUBEなどでもトレンチの解説動画がありますので、これを見て教え方を習得しましょう。
商品提供は、実際に使うお皿やグラスを使ってロールプレイング形式で行います。
ロールプレイング形式・・・教える側と教わる側に役割(お客様役と店員役)を与えて疑似体験をして実際に起こりうる場面に対応できるようにする形式のトレーニング方法です。
③バッシングとリセットの仕方を教える
お店によって呼び方が異なるので用語の説明をします。
バッシング・・・お客様が帰られたあとの席を片付けの一環で、お皿やグラスなどを下げることです。
リセット・・・バッシングの終わったテーブルや拭き上げや調味料セットの補充を行い、お箸や取り皿などを準備して、次のお客様をご案内できる状態にすることです。
お客様のご来店毎に必ず発生する作業なので、お客様のご来店がある限り慣れていないスタッフにも、簡単な仕事として取り組んでもらいやすい仕事として割り振れます。
OFF JTで教えて、OJTでどんどん実践してもらいましょう。
OFF JTに使う時間数
この早期にOFF JTに使う時間数は1時間から3時間です。
基本的には知識教育と、実際にお客様へのサービスを疑似体験してもらいながら、学んでもらうロールプレイング形式の実践教育です。
1時間から3時間というのは、教わるスタッフの理解度にもよりますが、教育する側の経験値や教え方でこの幅が生まれます。
教える内容をまとめて当日新人スタッフに渡すことができれば、知識教育の部分は宿題として覚えてきてもらうこともできます。
宿題への取り組み方には、理解度はもちろんスタッフの個性や考え方なども見て取れるので、個別に教えることをカスタマイズする材料として活用していくことも可能です。
OFF JTが終わったら次の3つを意識してOJTを始めよう!
OJTで教える際に、特に意識して欲しいのは次の3つです。
①簡単なことから教える
簡単なことを教えて、実践させることで小さな成功体験を積ませます。
この成功体験が自己肯定感につながり、次の仕事への積極性に繋がります。
②疑問に思うことが無いかを確認する
相手の理解度を見極めて教えることが特に重要です。
教わる人は基本的に質問はしずらいものと認識して、こちらから理解できているかを質問したり、実際に実践してもらい本当にできるかをこまめに確認をするとよいでしょう。
③意識的に褒めること
学生のスタッフや若いスタッフはSNSでいいね!されることに慣れています。
叱られることには慣れていないので、注意する場合でも言い方に気をつけないと、単に怖いだけの人になる恐れもあります。
褒めることを優先すると教える人への警戒心がやわらぎ、心の距離も縮まり本音を話しやすくすることができます。
まとめ:私の経験に基づく結論は飲食店のスタッフに長く続けたいと思わせる教育を!
飲食店のスタッフが長く働く教育の仕方について解説しました。
ここまでの内容は私の経験に基づく具体的な方法論で、これまで私が実践して結果を残せたもので、私の部下にしか教えたことのない内容を初めて公開しました。
飲食店のスタッフが長く働くための教育で最も大切なことは、働き始めたスタッフへ寄り添って教えてあげることです。
人がいないから、いきなりOJTで始めるのではなく、OFFJTから始めて予習をしてから実践をすることで心理的なハードルが下がります。
そして新しいスタッフに早い段階から仕事に参加している意識と、お店の役に立っているという自己肯定感を持てるように、簡単に出来る仕事から教えていきましょう。
これから先、飲食店のスタッフは採用がどんどん難しくなります。
採用したスタッフも、長く続けたいと思える環境と教育の整備が重要になります。
この記事を参考にしていただき、スタッフの離職率が低くなれば幸いです。