飲食店はスタッフがすぐに辞めると言われていますが、スタッフがすぐに辞めることについては、新しく採用したスタッフの適性がなかったと結論付けてしまいがちです。
採用した飲食店側の採用手順や初期の導入教育と受け入れ体制について問題が無かったかを振り返るケースがほとんど無いのが現状です。
そういった現状をふまえて、飲食店のスタッフがすぐに辞める理由が何かを解説しその改善策を具体的に伝授します。
この記事は約20年間の間、飲食店の店長やマネージャーを経験し、スタッフやトレーナーの面接と教育マニュアルの構築に携わった経験と数多くの部下を指導する中で得た知見をもとにまとめたものです。
想定している読者は次のいずれかに当てはまる人です。
- 新卒で中途採用で飲食店の店長になった方が、面接や教育経験が浅い方
- 料理の修行はしたけれど、スタッフの面接や採用の経験がないまま独立された個人店の店長やオーナー
- 店長歴10年以上というキャリアはあるが新しい知識を得たいと思う方
アルバイトスタッフがすぐに辞めてしまう現状を解決したいと思う方に、この記事を読んで実践していただくことで離職率の低減に繋げることができます。
Contents
飲食店のスタッフがすぐに辞める理由とは?
「飲食店の求人は募集を出してもなかなか採用できない」
「最近の学生は飲食店のアルバイトをしない」
「採用してもすぐに辞めてしまう」
これらは人材不足に悩むお店の店長がよく口にする3大フレーズです。
「なかなか採用できない」という事象については、求人広告の採用担当からもらうデータなどを見ても直近10年位は顕著にその傾向が見てとれます。
「最近の学生は飲食店のアルバイトをしない」という事についても、アルバイトとして募集される職種の幅が広がったり、副業として取り組むようなことを学生がしているケースも見かけます。
こういった背景も含め飲食店以外のアルバイトが魅力的ということも、選択肢が増えている現在のアルバイト事情を踏まえると否定できない事実です。
一方で、「採用してもすぐに辞めてしまう」という事については、採用したスタッフが悪いのでは無く採用する側に問題があることがほとんどです。
もし採用したスタッフが1週間以内に辞めている場合は、次の2点が飲食店のスタッフがすぐに辞める理由です。
- 面接の段階で良いことしか伝えていないから
- 新しいスタッフへの配慮が足りないから
まずこの2点について解説します。
面接の段階で良いことしか伝えていないから
応募自体が少ない現状の採用活動において、募集広告では応募の間口を広めるために、「週1回~OK!」や「シフトは自由」のようなうたい文句を掲載することが増えていると思います。
この募集を見て応募したスタッフは「週1回でもいいんだ!」、「お店のオープンは17時からだから17時から19時まで働きたい」のように、自分の都合が全て通ると思って応募する人もいます。
実際にそういう回数や希望の時間を確保してあげたいほどスタッフが少ない店もあるのかもしれませんが、本当にそのシフトにだけ入ってもらうメリットがあるのかはよく考えるべきです。
面接の段階で次の4つを実際の現場でスタッフに求めることを必ず伝えて、反応を見たり約束できるかを事前に確認することで採用段階でのミスマッチを防ぐことができます。
- 仕事に慣れるまでは週2回以上の勤務。
- 必ず希望通りの時間で働けるわけではない。
- 忙しい時や暇な時に30分から1時間前後の勤務時間の調整がある。
- 大きな声で挨拶をしてもらう。
スタッフが少ないお店の店長はついつい、エントリーシートを確認して「いつから働ける?」と聞くだけの面接になりがちです。
しかし、こちらからの質問をしてスタッフに話をさせることで応募者の思考や行動特性を探ることも大切です。
新しいスタッフへの配慮が足りないから
新しいスタッフが1週間以内に辞めるお店で多いのは次の2点です。
- 初めて働くスタッフが、いつから働くのかを既存のスタッフが知らない。
- 初めて働くスタッフの、制服や名札などが事前に準備できていない。
この2つはスタッフへの配慮です。
初めて働くスタッフは、どんな人がいるのか不安で新しい環境に緊張しています。
既存のスタッフが新人スタッフが働くことを知らないと、「新人さん働くんだ、あっそうなんだ」で終わってしまいます。
制服も来てからあわてて準備すると、合うサイズがなかったり、名札を手書きで準備したり他のスタッフと違う違和感が生まれたりします。
こういうケースに当たった新人さんは、迎える側のウェルカム感が伝わらないだけでなく、最初の段階で残念な気分になることがわかると思います。
ここで、新人スタッフが働く予定の日にぜひしてほしいおすすめポイントを紹介します。
- 初日勤務で一緒に働くことになる既存スタッフに、「新人さんが働くから積極的に声をかけてね」と伝える。
- 新人スタッフをLINEに招待する前に、新人スタッフの挨拶に対して、LINE内での返信を必ずしてもらうように根回しする。
1は、新しく働くスタッフが来ると事前に知らせておけば、初めてのスタッフに既存スタッフが自分から挨拶してもらうこともできるので初めてで緊張している中、声をかけてもらえるのはうれしく感じるものです。
2もLINEの挨拶を仕込むことで、溶け込みやすい雰囲気と親切な人たちのイメージがつくのでお店に好印象を持ってもらえます。
飲食店のスタッフがすぐに辞めるのを防ぐ方法は?
先ほどは採用したスタッフが1週間以内に辞めるケースでよくあることをお話しましたが、
逆に上記した二つの項目を確実にしておけば、1週間以内の離職率は格段に下がります。
それでは、飲食店のスタッフがすぐに辞める原因について解説していきます。
飲食店のスタッフがすぐに辞める原因は次の3点です。
- 教える店長のトレーニング経験が不足しているから
- 店長のスタッフとのコミュニケーションが不十分だから
- スタッフが楽しく働けないから
こちらの改善方法を解説していきます。
教える店長のトレーニング方法を見直す
端的に言えば、店長がスタッフにトレーニングする経験が不足している場合がほとんどです。
みなさんが、飲食店でスタッフとして働き始めたときの事を思い出してみて下さい。
仕事を教えてもらったと思います。
その時に店長から直接教わった人は少ないのではないでしょうか?
新卒で本部や研修店舗で研修を担当するトレーナーから教わったケースを除くと、店長以外の社員から教わったり、そのお店で働いているアルバイトスタッフから教えてもらうケースが多いと思います。
こういったケースは、作業の仕方を教わることができますが、作業の仕方を教える方法は直接教えてもらっていないことがほとんどです。
トレーナーや教えてくれた人が上手に教える人だったら、その教え方を思い出しながら教えるのもよい方法です。
しかし、意識的に教えるポイントや注意する点などを自分の中で体系化できていないと、相手が自分の説明を理解できているか把握できません。
そのスタッフの理解度や習熟度に応じた作業指示ができないと、新人スタッフは自分のするべきことが消化しきれず仕事を難しく感じてしまいます。
いきなり放置しすぎてもいけないし、何もさせず退屈させてもいけないのです。
特にアルバイトとして初めて働くスタッフには、無理なくできることからやってもらうことで仕事の最初のハードルを下げてあげましょう。
今日のバイトに参加できているんだという実感を持ってもらうことが大切です。
アルバイトさんの教育に限らず、人に何かを教えるときに相手の理解度を確認する作業は重要です。
丁寧に説明しても、初めて聞く人が100%教えたことを理解しているとは限りません。
ここまで説明した中で何かわからないことはありませんか?と尋ねても、他の人が質問しなければ、わからないことが恥ずかしいと思って質問ができない人が多い現実を知りましょう。
それを頭において、理解度を確認し相手に寄り添いながら教えていくことができれば、スタッフの理解度が高まり実践力も磨かれるでしょう。
店長のスタッフとのコミュニケーションを見直す
すぐにスタッフが辞めるお店の店長は、スタッフとのコミュニケーションが不足しているのとコミュニケーションの仕方に問題があることがほとんどです。
店長にはコミュニケーションの能力が重要とよく言われます。
これは、お客様との接客だけで必要とされる訳ではなく、飲食店はみんなで働くチーム制なので、スタッフとの関係でも必要な能力です。
個々のスタッフと良い関係を構築し、スタッフの適性や能力にあわせてポジションや仕事の割り振りをその都度変える必要があるからです。
また、指示する側はお願いしているつもりでも、指示を受けたスタッフが高圧的に感じたらパワハラと受け取られることもありえます。
これらのことも踏まえて、店長はスタッフとの関係構築で得られるメリット3つを頭に入れておきましょう。
- スタッフとの良好な関係を構築することで離職率が低下する。
- スタッフの募集費用や育てるための教育コストが下がることで利益向上に繋がる。
- スタッフが定着することとサービスレベルが安定して顧客満足度が向上するので売上UPに繋がる。
こういったメリットが得られるので積極的なコミュニケーションを心がけることはもちろん、コミュニケーション論を学んだり、人の感情の動き方なども学ぶとよいと思います。
YOUTUBEなどでも無料で学ぶことができます。
スタッフが楽しく働けるように改善する
基本的にスタッフが楽しく働けているお店であれば、スタッフがすぐに辞めることはありません。
極論を言えば、スタッフが「仕事が楽しい」と感じたり、「一緒に働く仲間に会いたい」と思ってもらえたら、スタッフの離職率は下がりスタッフの希望シフトは増えます。
私が以前勤めていた会社では、3カ月に1度全社で店舗スタッフを集めて食事会や、ボーリングなどで親睦を深めていました。
店舗ごとのスタッフの参加率も、売り上げがよいお店ほど参加率が高く参加者みんなで楽しんでいました。
そういうお店は、シフトの希望が多く集まるので自店舗だけでシフトが組め、店長も休みがしっかりとれるお店がほとんどでした。
逆にスタッフの参加率の低いお店ほど、シフトの希望が集まらず近隣店舗の社員がヘルプする体制を取ることもありました。
こういうお店には、スタッフの充足率が高いお店の店長を配属すると、確実にお店の雰囲気が変わります。
スタッフの充足率の高い店長に共通して言えるのは雰囲気作りのウマさです。
店長の持つキャラクターという要素もありますが、こういう店長のお店は営業中にスタッフが笑顔で働いていることが多いです。
- スタッフに意識的にポジティブな言葉を発している。
- 店長自身も常に笑顔で働いている
- スタッフへの関心を常に持っている
ほんの一例ですが、この3つを意識して行動するだけでも、スタッフの笑顔が増えます。
まとめ:飲食店のスタッフがすぐに辞めるお店の改善策
今回は、飲食店のスタッフがすぐに辞めるお店によく起こっている事象をまとめました。
採用したスタッフが1週間以内に辞めている場合の理由は次の2点。
- 面接の段階で良いことしか伝えていないから
- 新しいスタッフへの配慮が足りないから
採用したスタッフが1週間以上勤めている場合でも次の3点は要確認です。
- 教える店長のトレーニング方法
- 店長のスタッフとのコミュニケーションを見直す
- スタッフが楽しく働けるように改善する
この5つの部分を改善することで、スタッフの定着率が徐々に改善していきます。
残念ながら、取り組んだからと言って劇的に改善することはほとんどありません。
それはお店の離職率が高いのは、これまでの取り組みの結果だからです。
この内容を知ったことで今後意識して取り組めば必ず改善できます。
飲食店のスタッフがすぐに辞めるお店は雰囲気が悪いお店です。
雰囲気をよくすることで、スタッフも楽しく働けて長くつづけるようになります。
ぜひ私の経験を参考にしていただけたら幸いです。